2012年4月3日火曜日

当時の朝鮮軍報道部が製作した

太平洋戦争開戦直前の1941年11月、日本と朝鮮で大々的に公開されたが、戦後、行方が分からなくなった映画「君と僕」のフィルムの一部が発見された。「内鮮一体」をスローガンに、朝鮮民族の皇民化を推進する目的で作られた劇映画だ。

東京国立近代美術館フィルムセンターの特集「発掘された映画たち2009」の一作品として26日と28日、68年ぶりに上映される。

所有していた人が昨年、「貴重なものではないか」と同センターに持ち込んだ。作品全体(96分)の4分の1の長さだった。実在の朝鮮人志願兵で最初の戦死者になった李仁錫上等兵を演じる俳優が「天皇陛下万歳」と叫んで息絶えるシーンなどがある。映像はかなり鮮明で、ノイズはデジタル処理された。

「君と僕」は当時の朝鮮軍報道部が製作した。監督は、衣笠貞之助監督の助監督なども務めた日夏英太郎(本名・許泳)。小杉勇や三宅邦子らが出演し、李香蘭(山口淑子)もわずかながら顔を出している。実際の志願兵や朝鮮軍を動員して各地で派手なロケを行い、“国民映画”として世に出たという。

「発掘された映画たち」(21日~5月3日)は計44作品を上映。日本人が撮影した映画の中で現存最古の「紅葉狩り(日活版)」(1899年)もラインアップに入っている。3月、映画で初めて国の重要文化財になることが決まった作品だ。また、最新のデジタル処理で復元された「羅生門」(1950年)や「槍(やり)供養」(1927年)などもある。