2013年8月28日水曜日

観光客は増えているのに、なぜ失業率は高いままなのか

「沖縄は復帰以来、政府から与えられた八兆円をこえる補助金を食べ尽くし、ただただ排泄しただけではないか」こう言うと、おそらく怒り心頭の方も少なくないだろう。しかし、私はそれほど間違てはいないと思っている。その結果どうなったか。沖縄への賠償金的な性格だった補助金が、〇七年に米軍再編推進法が成立すると、「言うことを聞いたらカネを出してやる」式の、ほとんど惘喝に近いものに成り下がった。それでも沖縄は断り切れないのである。なぜなら、すでに補助金に依存しなければやっていけない体質になっているからだ。

観光客は増えているのに、なぜ失業率は高いままなのか。沖縄が開発振興予算を使って成功したのは、おそらく観光だけだろう。八八年から日本で唯一の自由貿易地域が那覇にできたが、これといった成果がないまま、いまや破綻寸前の状態になっている。その後、九九年に性懲りもなく再びできたのが、中城湾の特別自由貿易地域だ。これも成功する確率は宝くじなみと言われている。成功する見込みのないまま、予算だけが垂れ流されてきたのが沖縄振興開発という幻想だった。ただ、三五年以上かかって根づいたのが観光だけというのは、地理的にも県民性においても、観光が沖縄にもっともよく合っているということではないだろうか。

もっとも、観光産業は発展したものの、恩納村の区長によれば、リゾートホテルがたくさんできても雇用確保にはそれほど役に立っていないという。沖縄で最大の社会問題は、日本一と言われる失業率だ。平均して八%前後と、全国平均の二倍近い数字が続いている。とくに若年層はさらに高く、〇六年では一三・二%にもなった。観光客が毎年のように増えているのに、なぜ雇用が増えないのだろうか。たとえば恩納村冨着自治会の区長によると、「地元にはホテルが八棟あるが、従業員に占める村民の割合は三分の一もない。就職できても慣れないとか、給料が安いとかで、一年後には辞めてしまう。すくそばにサンマリーナホテルがありますが、ここで働いている地元の人で、私か知っているのは一人だけです」

恩納村にかぎらす、沖縄でホテルを建てるときは、地元との間で、従業員の何割かを地元から雇うという契約を結ぶ。ところが、一年もしないうちに大半が辞めてしまうのだそうだ。その理由について、あるホテルの経営者はこう言った。「沖縄人にとって、いいとされる職業は官庁に勤めることで、ホテル業は水商売と同じなんです。海のものとも山のものともつかない仕事なんて長く働く職場じゃないと思ってるから、ホテルマンとしてプロに徹する意識も生まれない。雇う方もすぐ辞められたらと考えたち、大事なことは教えられない。だから、地元の人が辞めたら、補充スタッフを本土から連れてきます」逆に雇われる方に尋ねると、ホテル業に対する差別的意識もあるが、給料が安いことが最大の理由だという。あんな安月給で三交代なんてやってられない、というわけだ。

しかし雇う側にすれば、ノウハウを教えてもすぐ辞められるのだから高い給料を払う価値がないとなり、これはもう悪循環でしかない。そのうち、沖縄の観光を本土の人間が支えるようになるかもしれない。沖縄にとって、いまや観光は基幹産業なのに、これでは、たとえ観光客が1000万人になっても、相変わらず失業率が高止まりのままだろう。基幹産業である観光を地元の雇用に結びつける方法。必要なのは、観光に対する意識変換だと言われる。あるリゾートホテルの役員と話をしていたときだ。彼は「私の妄想かも知れませんが」と前置きしたあとで、ホテル学校をつくったらどうかと私に提案した。私には決して妄想とは思えない。