2014年9月17日水曜日

財投資金に頼らずに調達できる資金額

事業官庁による財政投融資の要求には、財政法や予決令(予算及決算令)にみるような手続き上の定めは存在していない。しかし、実際には予算の概算要求に準じた手続きがとられている。事業官庁は、八月末日までに次年度予算要求と同時に、財政投融資の配分要求を理財局に提出する。したがって、要求官庁は、概算要求の取りまとめ段階において、特定事業の財源として無償資金である予算と有償資金である財政投融資の組み合わせを、省内の概算要求編成過程において調整している。一方、八月末日までには、先に述べた預託側から預託増加額についての資料が理財局に提出され、原資見込み額が検討される。

さて、こうして提出された財投資金についての要求は、主計局による予算のヒアリングとまったく同様に、理財局によるヒアリングを受け、その後に理財局内部の審査にかけられる。理財局は、個別機関についての審査の過程を次のように説明している。まず事業実施の環境、各機関の実施能力と事業単価、各機関の経営状況を判断した上で、さらに政策的プライオリティを加味して事業規模(融資機関については貸出規模)を決定する。次いで、事業実施に必要となる資金のうち、財投資金に頼らずに調達できる資金額について審査する。この中には、各機関の自己資金(事業収入、貸付金の回収など)は当然として、一般会計や特別会計からの補助金、出資金、貸付金などが含まれる。財投所要額は、事業費から自己資金を控除した額を基本としている。

他方において、理財局は、郵便貯金や年金資金などの預託増加額について所管の省庁と調整し、また簡易生命保険資金についての財投協力がどの程度となるのかをつめていく。こうして各機関の財投所要額と原資見込みが固まると、どの原資をどの機関にどれだけ配分するかが決定される。この場合、中心を占める原資は資金運用部資金と簡易生命保険資金である。だが同時に、各機関の民間資金の調達可能性が検討され、政府保証がつく時には財政投融資計画に計上され、それがつかない時には、各機関の自己資金扱いになり、右の二つの巨額資金の配分から除外される。

財政投融資計画は、予算の大蔵原案と同時に内示される。ただし、この段階では、産業投資特別会計産業投資勘定、政府保証債・政府保証借入金については、配分が明示されるが、資金運用部資金ならびに簡易生命保険資金については「融資」として一括扱いされ、それらの配分は明示されない。

予算の復活折衝と同様に、財政投融資計画についても復活折衝が行われる。そして復活折衝を経て確定した予算が閣議に提出されるのと同時に、財政投融資計画についても閣議に提出される。この段階ではじめて「融資」としてまとめられ七いた資金運用部資金と簡易生命保険資金の配分が明らかにされる(中川雅治ほか編『財政投融資』大蔵財務協会、一九九四年)。