2015年7月18日土曜日

扱う問題の複雑化・専門化

対外経済協力の場合、必要な予算は外務省についている(経済協力予算は、その主要部分が外務省予算の中に含まれており、いわば財布の紐を外務省が握っている)ので、〈経済協力局〉は他の関係官庁に対してもかなりの交渉力をもつことができる。また、条約の締結および解釈は、行政府では外務省(条約局)の権限になっているので、この二つの局で働く外交官たちは自信をもって仕事をすることができる。

ところが、例えば経済関係の問題になると、どうしても国内経済官庁にかなわない。〈地域局〉でも、政治関係の仕事であれば国内官庁に対してにらみを利かせることが比較的できるが、経済関係の仕事に関しては〈経済局〉と似たりよったりの立場に立だされる。そのような仕事になると、国内官庁と直接やり合う若い事務官たちぱ、自分の仕事を「郵便ポスト」というヤケ気味の比喩に例えることになる。

ほとんどの外交官は、二、三年、長くてもせいぜい数年という期間で、一つの職場から次の職場へと転々と異動する。よくいわれることは、最初の半年は見習い期間、次の一年ないし二年が本番、そして残りの期間は御奉公、という類の考え方だ。後でふれるように、この点では、いわゆる「キャリア組」と「ノンーキャリ組」とでは外務省としての扱いも違うし、本人たちの気持ちのもち方も若干違う面がある。つまり、キャリア組の場合、他の官庁と同じようにどんな仕事でもこなせることが求められている。そのような能力を示すことは、彼らの将来の「出世」にとって不可欠のものだ。

これに対してノンーキャリ組の場合、「なんでも屋」になる人もいるし、比較的特定の仕事に特化する人もいる。特に「特殊語学」といわれる特定国でのみ通用している言語を研修した者の中で通訳能力に才能を示す人は、その言葉を生かした仕事、そしてその言語を喋る国の仕事を専門にする傾向がある。また、特定の分野の仕事(例えば漁業)を一定期間続ける結果、その後もその人なしには済まなくなるようなケースも生まれる。