2015年10月17日土曜日

海外の機関投資家を相手する

総合電機という名のもとに、コンピューターのソフトウェアー事業を行なっている会社が掃除機をつくる。水産会社が京都に大きなホテルを持つ。こういった例をいろいろ見ていきますと、当事者としてはそれなりのシナジーがあるとは考えているのでしょうが、実際にはかなり疑わしいと言わざるをえません。

多くの場合、日本の大企業がコングロマリット経営から抜け出せないでいるのは、実は思いのほか単純なことが理由になっているようです。「この事業は、会長のFさんが部長だった頃に担当していた事業なんだ。自分を社長に引き上げてくれたFさんに、この事業を売りたいなんて言えるはずないじやないですか」本当のところはこのように考えている社長もいるかもしれません。

ところで海外の機関投資家を相手に日本の経営者がコングロマリット経営を擁護するのに使うロジックの二つ目がGE(ジェネラルーエレクトリック社)です。「コングロマリットは低く評価されると言いますが、納得できません。世界で二二位を争う価値が高い会社はとこですか。アメリカのGEでしょう。GEはコングロマリットの典型じやないですか」

たしかにGEは傘下に放送(NBCユニバーサル)、金融、医療機器、電力設備、航空機エンジンなどの事業会社を持っています。事業相互に関連性はなく、コングロマリットの典型です。どうしてGEは、コングロマリットーディスカウントを受けずに高い株価を維持することができたのでしょうか。

実は、これはアメリカの研究者の間でも話題になってきた点です。現在の一般的見解としては、数年前までGEの会長だったシャッターウェルチが、事業ポートフォリオを築く抜群のセンスを持っていたからだとされています。すなわちウェルチは、経営者、事業家でありながら、株式市場や投資顧問市場などで活躍するプロのポートフォリオ・マネージャーを上回る「天才的なポートフォリオ・マネージャー」でもあったとする見解です。

日本の総合電機の社長の中には「GEでもコングロマリット経営をしているので、当社も各種の事業分野を有している」と、欧米のアナリストに説明する方がいます。しかしながら、こういった説明は欧米のアナリストたちにすぐ切り返されてしまいます。いわく、「第一にシャッターウェルチは例外です。第二に、GEは各々の事業部門で、すべて、業界第一位(か、悪くても第二位)の地位を確立しています。それができない事業部門については、GEはきちんと売却してきています」