2015年11月18日水曜日

総合福祉保健センターの建設

これまで福祉の担当者は、ほとんど地域のなかに入っていかなかった。それを保健婦と一緒になかに入っていって、福祉の目で住民の問題を見てもらうようにした。ここが野洲町のユニークな点である。このシステムを動かすために町は総工費二〇億円をかけて、一九九二年に「野洲町総合福祉保健センター」(川上雅司所長)を建設した。このセンターは、敷地約二万平方メートルに、のべ面積三六〇〇平方メートルの三階建ての堂々たる偉容を誇っており、文化センターかと見まちがうほどである。新幹線脇に建っているので、「のぞみ号」の車窓からでもはっきりとわかる。

組織には地域の保健・医療・福祉のあらゆるものが揃っており、まさに地域の保健・医療・福祉の発信と受信の基地になっている。いわゆる保健センターといわれるもののなかで、これだけ立派なものは、少なくとも、私は初めて見学した。この保健センターが設立される前年の一九九一年に野洲町は特別養護老人ホーム「悠紀の里」(五〇床 運営は社会福祉法人)を開設している。この特養はB型(重介護型)のデイサービスセンターを併設する。

このようないわゆる、ハコモノだげでなく、町では実質的に保健・医療・福祉のドッキングに努力していることが二つある。その一つは、この町には医療法人立の病院が一ヵ所、診療所が一一ヵ所あるが、モデル事業を通して、要介護老人のすべてに主治医を確保することに成功したことだ。これは非常に重要なことで、老人が在宅での生活をするためには、どうしてもかかりつけ医の協力が必要である。そこに、保健・医療・福祉のインテグレートが重要な要素になるわけである。

もう一つは、このモデル事業の四年間に在宅支援の活動が住民に浸透したということである。在宅ケアについて住民自身から相談を持ちかけてくれるケースが年々ふえていること、そして相談を持ちかける時期が年々早くなっていること、さらに相談を受けてからの対応が速やかになっていることなどがそれを物語る。