2016年1月20日水曜日

PKO協力法の疑問点

湾岸危機のさなか、ニューヨークを訪れた自民党代議士に対して、当時の米国国連大使は、非公式ながらもこんな趣旨の発言をしたことがある。「日本が常々、常任理事国になると言うのなら、気持をはっきり実行に移してほしい。日本の国旗を立てた船舶を出してほしい」。これは、暗に掃海艇の要請を求める言葉だったが、英国大使はさらに、別の席で、「金だけではすまないのではないか。

世界中が日本を見守っている」と、要員の派遣を促した。現在展開中のPKO要員七万千人近くのうち、西側派遣は約四〇%に上る。常任理事国になれば、こうした通常のPKOは言うまでもなく、平和実施部隊や多国籍軍型の活動についても、風圧が強まることは避けられないだろう。

第一の問題は、現行のPKO協力法にある。「国連平和維持活動に対する協力に関する法律」は九二年六月に成立し、それに基づいてカンボジアなどに自衛隊が派遣されたが、さまざまな問題点は、いまだに解決されたとは言えない。一つは、カンボジアで実際に起きたように、PKO参加五原則の一つである「停戦合意」が完全に守り切れていない場合、どの時点で、だれが撤収を判断するのか、という問題だろう。

第二は、武器使用の許容範囲だ。協力法では、組織としての武力行使を排除するために、生命や身体防護のための「正当防衛」に限定しているが、国連の実際の解釈は、生命防護だけでなく、「任務遂行妨害」の場合にまで範囲を広げている。これを実際に区別し、他の国連部隊と調整することは、かなり困難な問題だろう。

第三は、PKOとPKF(平和維持軍)の関係だ。国連では、日本のように両者の概念を区別し、使い分けることはしていない。協力法では、PKFについては凍結したが、カンボジアでの実際の活動は、PKOであっても、他のPKFと混然一体となって展開するのが一般的だったと言われる。

第四は、日本の指揮権と国連の司令官の「コマンド」の関係だ。協力法では「コマンド」を「指図」と呼んで日本の指揮権と区別したが、実際の現場での作戦指揮は、国連司令官が統一するというのが常識になっている。カンボジアでは大きな問題にはならなかったが、日本の指揮権と国連の「コマンド」が食い違った場合にどうするのかは、依然として不透明のままだと言える。