2012年5月23日水曜日

天下りのあっせんの全面禁止

事故米不正転売事件で引責辞任した農林水産省の白須敏朗・前事務次官(58)が、水産庁が所管する社団法人「大日本水産会」(東京都港区)の会長に就任したことが分かった。

民主党は「官僚の天下りのあっせんの全面禁止」を掲げており、政権発足前の駆け込み人事とみられるが、農水省は公表していなかった。

農水省や同会によると、同会は中須勇雄・元水産庁長官(65)が03年6月から会長を務め、今年5月、総会と理事会が開かれ4期目を選任された。しかし、今月1日の臨時総会と理事会で白須前次官の会長就任が決まった。任期は11年5月まで約2年で報酬は年1860万円に上る。

内閣府の官民人材交流センターは昨年12月に設立されたため、既にOBとなっていた白須前次官は、あっせんの対象外。農水省は「こちらであっせんはしていない」としており、同会は「中須前会長ご自身が後任を探していた」と話している。

今回の人事が公表されなかったことについて、農水省秘書課は「うちが発表すれば国が任命したように誤解される恐れがあったためで、隠していたわけではない」と釈明している。

「駆け込み」と指摘される人事では、内閣府審議官を7月に退職した旧厚生省出身の柴田雅人氏(60)が、8月29日付で国民健康保険中央会理事長に就任したことが明らかになっている。

2012年5月16日水曜日

証拠の一覧表のみを映す配慮

性犯罪を初めて審理する全国3件目の裁判員裁判の初公判が2日午前、青森地裁(小川賢司裁判長)で始まった。1日に選ばれた裁判員は男性5人、女性1人。3人の補充裁判員(男性1人、女性2人)とともに審理に臨んだ。被害者のプライバシー保護とわかりやすさの両立が求められる公判の進行が注目される。

強盗強姦(ごうかん)と窃盗、窃盗未遂などの罪に問われているのは、住所不定、無職田嶋靖広被告(22)。2006年7月、窃盗目的で女性宅に侵入、帰宅した女性に包丁を突き付けて「言うことを聞け。殺すぞ」などと言って乱暴し、現金1万4000円を奪って全治3日間のけがを負わせたなどとして、計4事件で起訴された。

午前10時に始まった公判の冒頭、小川裁判長は2件の強盗強姦事件について「被害者のプライバシーを守るため、被害者はAさん、Bさんと呼ぶことにします」と説明。さらに検察官が起訴状を読み上げた後、小川裁判長は田嶋被告に「被害者の名前を口にすることは絶対ないように」と注意した。

続く罪状認否で、田嶋被告は「はい、間違いありません」と起訴事実を認めた。検察側の冒頭陳述は、普段は法廷にほとんど立たない青森地検ナンバー2の田野尻猛・次席検事が担当。1辺が1メートル以上あるパネルを指示棒で時折指しながら、被告が借金を繰り返したことなどを説明し、金目当てで事件を起こしたことを強調した。

また、冒頭陳述の最後に、「注目していただきたい点が五つあります」と述べ、女性の人格を無視した卑劣な犯行であることや、被害者に深刻な影響を与えたことなどを考慮するよう求めた。

続いて、竹本真紀・主任弁護人が証言台の前に立ち、裁判員らに「皆さんおはようございます。私が主任弁護人の竹本です」とあいさつして冒頭陳述に入った。竹本弁護人は書類を見ず、裁判員の顔を見つめながら主張を展開していった。最初の事件については、「被告は、包丁を被害者ののど元には突きつけていない。事件当時は19歳の少年で、計画的な犯行でもなかった」などと被告に有利な事情を説明した。

また、検察側は証拠調べで被害者の供述調書を読み上げる際に一部を省略し、「後で裁判員にコピーを配る」と説明した。傍聴席に見えるモニターには証拠の一覧表のみを映し、現場写真などは裁判員の手元にあるモニターのみに示した。

2012年5月1日火曜日

「歌舞伎座」の建て替え構想

歌舞伎の殿堂「歌舞伎座」(東京・銀座)の建て替えを検討していた松竹と歌舞伎座は26日、現在の外観を踏襲する新劇場のデザインや日本文化の発信拠点などを備える計画の概要を発表した。総事業費は約430億円。来年5月に着工、新劇場とオフィスビルを併設した建物の完成は13年春の予定という。

現歌舞伎座は1924年に建設されたが、45年の東京大空襲で甚大な被害を受けて閉場。その後、戦火をくぐった骨組みを元に修復されて51年に再開場した。現状保存も検討されたが、老朽化やバリアフリー対策などから建て替えに踏み切った。

この日の記者会見で、大谷信義・松竹会長は「劇場は和風の独立性が強い設計にする。100年先も歌舞伎座で歌舞伎を続けるには、建て替え時期は今しかないと判断した」と話した。

現劇場の一部は再利用するという。今回公表された外観イメージは、今年1月時点の派手さを抑えた予想図に比べ、現在の歌舞伎座の外観により近くなった。

地上4階、地下1階の新劇場を現劇場の跡地に新築。客席数は現在の1859席と同程度になる。劇場の背後には、銀座を横切る晴海通りから約35メートル離れて地上29階、地下4階で高さ約135メートルの高層オフィスビルも新築する。劇場周辺の緑化など地域貢献にも取り組む。

建物内には、「国際文化交流センター(仮称)」▽学習の場としての「歌舞伎アカデミー(同)」などもつくる。迫本淳一・松竹社長は「世界に向けた日本文化の発信拠点にしたい」と話している。